01 6月 1000年続く地域文化を1日の観光から創り出す
温泉津はその名の通り、上質な温泉と港の町です。
世界遺産石見銀山の銀の積み出し港として栄え、江戸時代以来の ノスタルジックな町割りで、町屋、廻船問屋、温泉旅館、社寺等の伝統的建造物がよく残り、温泉街では日本で唯一の重要伝統的建造物群保存地区選定を受けた地域です。
大型量販店やコンビニ、チェーン店はなく、一般的には不便な田舎町と思われがちですが、だからこそ残る地域の文化の中で営まれる昔ながらの生活文化が色濃く守られている地域です。まさにこれこそが価値のある温泉津の地域資源だと感じています。
しかし人口減少・少子高齢化・空き家問題等地域課題もたくさんあります。わたしたちは、この温泉津町で暮らしや文化を大切に、また楽しみながらそれを継承していきたいと思っています。
1日の観光がきっかけで訪れた方が温泉津の人や暮らしに触れ、自分の大切なものにきがつくきっかけになったり、そんな中から温泉津の大切に守られてきた文化を一緒に守ってくれるきっかけになるかもしれない。そんな滞在を提供しながら観光を入口としたまちづくりをしていきたいと考えています。
Text by Masako Ohmi
Photography by Koichiro Toda
夫の康忠さんと
近江雅子さんは、温泉津・日祖地域の隣のまちである江津出身。2013年に夫と2人の娘と共に東京から島根に戻った。日祖という場所を見つけたのは、戻った時だったという。美しく、ひっそり佇む集落に惚れこんでしまったそうだ。島根に戻ってきたての頃は、苦労も少なくなかった。夫はどうしても東京の生活が恋しくなってしまったようだ。都会での生活に慣れてしまった家族にとって、島根での田舎暮らしは新しい挑戦だった。
しかし、彼女は居るべき場所にいると信じて疑わなかった。日祖を新しいパラダイスにできるという信念があった。家族のためだけでなく、まだ日祖に来たことがない人たちにとっても。そして2018年、雅子さんは日祖の古民家を一軒借りて、モダンなゲストハウスに改装することを決めた。その後、近隣の住民たちへ説明を経て、少しずつ理解と協力者を獲得した。翌年ついにゲストハウスHÏSOMを開業。
今は夫や家族ともヴィジョンを共有し、彼女は日祖の美しい集落に新しい息吹を吹き込むという夢の実現に向けて、前進中。雅子さんはビジョナリーであり、未だ知られざる宝物を発見し、その宝物を守る人たちと出会うことができる冒険家だ。
(HÏSOM 日祖ウェブサイトより)
Text by Maki Nakata
Photography by Edward Hames